特選コラム


 手作り石けんは安全なのか

 手作り石けんを作っている当舎の製造担当(つまり筆者)は、手作り石けんの販売やオークションがあれば参考として、できるだけ買い集めるようにしています。見ると作り手も概して誠実で真面目な人たち(ソーパー)が多く、道の駅やネットで買った石けんも、それほど外れはありません。このジャンルに市場があると分かり、粗悪品を売る人が参入してくると困るのですが。

 作れるのもごく少量、多くは手作業で、ボウルでかき回して調合する石けん作りはそれなりに手間のかかる作業ですが、気になるのは安全性です。旧薬事法には浴用に用いることのできる「化粧石けん」の定義がありますが、これは大規模設備用で、こういうソーパーのニーズを満たしていません。筆者としては大学の研究室に持ち込んで分析してもらうとか、もっと簡単な品質保証で良いと思うのですが。

 ちなみに、石けん中の水酸化ナトリウムの残留(許されていない)は塩酸を加えると塩(NaCl)を生じることで測ることができます。また、pH試験紙で水素イオン指数pHを測ることで、間接的にその存在を検知することができます。現在の当舎では後者の方法によっています。pH7が中性ですが、標準的な石けんのpH指数はpH9〜10といわれています。印鑑なしで購入できるアルカリでは最も強い炭酸ナトリウム(これと重曹を1対1で混ぜたものがセスキ炭酸ソーダ)の水溶液はpH11、除毛クリームはpH12〜13となります。何となくどんなものかイメージできませんか?



 なお、当舎では今のところpH10以上の石けんは確認されていません。材料に炭酸ナトリウムも使っているのですから、これはけん化反応が全体に十分に行き渡っていることを示しています。検査は調合から比較的早い時期、10日後くらいに行っています。傾向として、常温で液体の不飽和脂肪酸の多い石けんはpH値が低い傾向があり、融点の高い飽和脂肪酸の多い石けんはpH値が高い傾向があります。これは撹拌時の油温や個々の油の硬化度(ヨウ素価という)の違いから来る混ぜやすさと大いに関係があると思われ、当舎でも常に改善を念頭に置いているところです。測定したpH値は時間が経つにつれ下がることはあっても上がることはないので、よほど異常な値でない限り、一月後の入浴テストで再検査はしません。誰が危険な石けんで全身やけど覚悟で入浴なんかしますか。

 あと、pH試験紙は測定から5秒以内に色を見分けなければいけませんが、紫色のpH10を見分けられないことはありませんが、同じ緑色のpH8と9は濃淡の違いだけで、測定者の気分と主観が結構入ります。分からない場合は8〜9と記入していますが、pH値には整数はあっても小数はないので、本当は測定後、即時にどちらかに決めなければいけません。試験紙自体の品質もあります。いずれにしろ、危険を感じるものは今までなかったということです。あったらそんなものは廃棄して、入浴テストは中止して塩水に放り込み、粉石けんに作り替えてしまいます。pHが問題ではありませんでしたが、初期の中和法で一例だけそういう例がありました。

 と、いうわけで、筆者は石けんの安全性の評価はpH試験か、より直接的なJIS石けん試験法(先に挙げた塩酸を使うもの)で十分だと思っていますが、ソーパーの方々はもっと慎重です。実は当舎もそうなのですが、こういった測定をした上で、大胆にも自ら入浴して安全性を確かめており、筆者の見る所、少なくともそういう石けんは作り手を信じても問題なく、使っても危険なものではないと思っています。とりあえず、筆者が言えるのはそのくらいですが、筆者の言い分を信じるかどうかは、この文章を読んでいる人の主観にお任せします。

(文責・堀内)

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